行きは遠いが帰りは近い
旅の帰り道が短く感じるのは脳の錯覚ではない!認知科学が解明する「帰路効果」のメカニズム
「帰路は早い」これは多くのドライバーが体験する不思議な感覚だ。
行きは長く感じた同じ距離の道のりが、帰りになると途端に短く感じる。
この「帰路効果」と呼ばれる時間知覚の歪みは、単なる気のせいではない。認知心理学の研究によると、脳は慣れない道と慣れた道とでは、まったく異なる処理をしているという。
目的地に向かう時は新しい情報に神経を集中させ、帰路では脳がオートパイロットモードかのように切り替わる。
日々の通勤でも、旅行先でも、私たちの時間感覚はハンドルを握る手と同じように勝手に動いている。
私たちの脳内には、場所細胞や格子細胞と呼ばれる特殊なニューロンが存在し、これらが「脳内GPS」として機能している。
この脳内GPSは、慣れない場所ではより活発に働くという特性を持つ。
つまり、新しい環境では細胞が頻繁に発火して空間情報を記録するため、脳はより多くのエネルギーを消費する。一方、既知の道を走行する際には、脳はこのマッピング作業を省略できる。
すでに作成された認知地図を参照するだけで済むため、認知リソースの消費が少なくて済む。
この認知処理の違いが、行きと帰りの時間知覚の差を生み出す原因となっている。興味深いことに、MRIスキャンによる研究では、新しい道を走行中の脳は、海馬や頭頂葉など空間認知に関わる領域がより活発に活動しているようだ。
さらに、ストレスや注意の分散も時間知覚に影響を与える。
慣れない道では不安やストレスが増加し、時間がゆっくり過ぎているように感じるのだ。
先日、所用で久里浜まで出かけました。
片道二時間、ちょっとした小旅行でさすがに遠いと感じました。
しかし、帰りはそこまで遠いとは感じず、やはり帰路効果が働いていたのでしょう。
時間は相対的なものですが、その感じ方は非常に主観的です。
楽しい時間はとあっという間ですが、つまらないと長く感じます。
脳の処理の仕方で考えると、楽しい時は情報が快適に処理されますが、つまらない時はストレスによって処理に滞りが生まれます。
結局は、脳の情報処理の仕方によって感じ方が変化するのでしょう。
相対性理論では、物体が高速で移動したり、強い重力の影響によって、時間は変化すると説明しています。
不変であると思っているものでも、実は、不変ではないのです。
私たちは結局、自分の意識を通して外の世界を見つめていて、脳というデバイスがそれを担っています。
時間も、脳が作り出したものであり、すべては意識の産物なのかもしれません。

