読書録 vol.13

病を治す哲学 伝説的医書『黄帝内経』の驚異 青島大明

東洋医学は2600年の歴史がある。
その東洋医学の指南役になっている書物が、黄帝内経(こうていだいけい)である。

古い書物ではあるが、その中に蓄積された知恵と経験は、現代においても十分に通用するものである。
そもそも、効かないものであればすでに自然淘汰されているであろう。
環境は大きく変化したが、人間の本質はあまり変わっていない。
本書は、気功・整体師を生業とする著者によって記された、経験を交えた解説書である。

近代医学は、局所に注目した医学である。
身体は、巧妙な仕組みを持ち、非常に複雑であるため、そのまま理解するのはとても難しい。
そのために部分に分けて考え、発展してきたのが近代医学である。
その結果、細胞レベルや遺伝子レベルでの理解が進み、近年は目覚ましいほどの進歩をとげている。

一方、全体性に注目したのが東洋医学である。
当時は、顕微鏡といった研究機材が全くない時代である。
そのために、生命現象をまるごと観察し、自然との関係や臓器同士の結びつき、感情や思考等の影響等、身体だけにとどまらず、大きな目線で人間を捉えていた。
東洋医学とは自然と人間の在り方を説いた、哲学なのである。

どちらにも利点がある。
感染症の治療や、救命医療、外科手術等は西洋医学の発展の賜物だろう。
しかし、エビデンスを重視するあまり、他を認めようとしていないのが今の西洋医学である。
人間が、すでに真理に到達しているとでも思っているのだろうか。

確かに、細菌やウィルスは、感染症を引き起こす原因である。
西洋医学では、抗生物質や抗ウィルス薬、ワクチンといった話になるだろう。
しかし、それはあくまでも対処療法であり、問題の改善ではない。
なぜ、感染をしてしまったのか、寝不足はなかったか、食事はちゃんと食べていたか等、その原因を見つめることこそ、本来すべき治療である。

一昔前より難病の数は増えているが、その原因はほとんど分かっていない。
発展したとされている近代医学をもってしても、大抵の場合は炎症を抑えるステロイド薬を投与し、症状を抑えるという対処療法が関の山である。
現場には、医学の限界を感じている医師も多いのではないだろうか。

しかし、受け継がれた叡智では、なぜそうなったのかを説明することができる。
すべてではないかもしれないが、治癒することもできるだろう。
病名ではなく、身体の営みに注目しているからである。
病名は、あくまでも結果にしか過ぎないのである。

現代人の多くは身体の捉え方を間違っている。
病気とは、自分を見直すきっかけなのだ。
多くの人に読んで欲しい一冊である。